サックス入門
サックスは、どこから来た楽器なのか。
サックスの歴史を、大人初心者の方にもわかりやすく紹介します。サックスが生まれた背景や名前の由来、発明者アドルフ・サックスの人物像、ジャズや吹奏楽で親しまれるようになった流れを、サックス教室FLATらしい視点でまとめました。

サックスは、見た目の華やかさや音色のかっこよさから、ジャズのイメージが強い楽器かもしれません。
でも実は、サックスは比較的新しい楽器です。ピアノやヴァイオリンのように何百年も前から現在の形で親しまれてきた楽器ではなく、19世紀に生まれた、いわば“近代的な管楽器”のひとつです。
そして、このサックスという名前は、楽器を発明した人物の名前に由来しています。
その人物が、ベルギー出身の楽器製作者、アドルフ・サックスです。
この記事では、サックスがどのように生まれ、どんな音楽の中で親しまれてきたのかを、大人初心者の方にもわかりやすく紹介します。
サックスを作ったのは、アドルフ・サックス
サックスを発明したのは、ベルギー出身の楽器製作者アドルフ・サックスです。
「サックス」という名前は、このアドルフ・サックスの名前に由来しています。つまりサックスは、発明者の名前がそのまま楽器名になった楽器です。
アドルフ・サックスは、1814年にベルギーで生まれました。父親も楽器製作者で、彼は幼いころから楽器作りに囲まれた環境で育ちました。
クラリネットやフルート、金管楽器など、当時のさまざまな楽器に触れながら、楽器の音色や構造に強い関心を持っていたと言われています。
アドルフ・サックスが目指したのは、金管楽器のような力強さと、木管楽器のようなしなやかさをあわせ持つ楽器でした。
金属でできていて、遠くまでしっかり届く音を持ちながら、リードを使って表情豊かに歌うこともできる。そんな新しい管楽器として生まれたのが、サックスでした。

楽器職人の家に生まれた、発明家のような人
アドルフ・サックスは、単に楽器を作る職人というだけではなく、新しい音を考える発明家のような人物でもありました。
当時のヨーロッパでは、軍楽隊やオーケストラで使われる管楽器が発展している時代でした。
しかし、楽器ごとに音量や音色の違いが大きく、演奏の中でバランスを取るのが難しい場面もありました。
アドルフ・サックスは、そうした楽器の弱点や足りない部分に目を向け、「もっと力強く、もっとなめらかに、もっと表情豊かに演奏できる楽器」を作ろうと考えました。
その考え方は、今のサックスの音色にもつながっています。
サックスの音には、やわらかさもあり、力強さもあります。人の声のように歌うこともできれば、バンドの中で前に出る存在感もあります。
この独特の立ち位置こそ、アドルフ・サックスが目指した“新しい管楽器”の魅力です。
パリで認められ、サックスは新しい楽器として広がった
アドルフ・サックスはその後、音楽の中心地のひとつだったパリへ移り、自分の楽器を広めていきました。
19世紀のパリは、劇場や演奏会、軍楽隊など、さまざまな音楽文化が集まる場所でした。
新しい楽器を世に出すには、演奏家や作曲家にその魅力を知ってもらう必要があります。
サックスは、1840年代に新しい管楽器として注目され、1846年にはフランスで特許を取得しました。
この時点で、サックスはただの試作品ではなく、ひとつの楽器の仲間として正式に形づくられていきます。
今ではアルトサックスやテナーサックスがよく知られていますが、アドルフ・サックスはひとつのサイズだけでなく、音域の異なるサックスの仲間を構想していました。
高い音を担当するもの、低い音を支えるものなど、合奏の中で使いやすいように考えられていたのです。
新しい楽器だったからこそ、苦労も多かった
今でこそサックスは多くの人に知られている楽器ですが、誕生した当時はまったく新しい存在でした。
新しい楽器が登場すると、当然ながら歓迎する人もいれば、反発する人もいます。
アドルフ・サックスは、楽器製作者として高く評価される一方で、同業者との競争や特許をめぐる争いなど、さまざまな苦労も経験しました。
サックスという楽器は、最初から今のように広く親しまれていたわけではありません。
新しい音色、新しい構造、新しい役割を持った楽器として、少しずつ演奏家や作曲家に受け入れられていきました。
そう考えると、サックスはただ“かっこいい楽器”というだけでなく、挑戦の中から生まれた楽器とも言えます。
金属なのに、木管楽器?
サックスを初めて見ると、多くの方が「金管楽器」と思うかもしれません。見た目は金属で、トランペットやトロンボーンと同じような印象があります。
ですが、サックスはリードと呼ばれる薄い板を振動させて音を出すため、クラリネットなどと同じ木管楽器の仲間です。
金属でできているのに木管楽器に分類されるというのは、少し不思議に感じますよね。
楽器の分類は、見た目の素材だけで決まるわけではありません。どのように音を出すか、どんな仕組みで音が鳴るかが大切です。
サックスの場合は、マウスピースに取り付けたリードが振動し、その振動が管の中で響いて音になります。
この仕組みがクラリネットなどの木管楽器に近いため、サックスは木管楽器に分類されます。
見た目は華やかで、音はやわらかくも力強い。この少し不思議な立ち位置も、サックスの魅力のひとつです。

最初は軍楽隊やクラシックのために考えられた
サックスというと、ジャズのイメージが強い方も多いと思います。
ですが、サックスが生まれた当初からジャズで使われていたわけではありません。
アドルフ・サックスがサックスを作った時代、ジャズはまだ現在のような形では存在していませんでした。
サックスはもともと、軍楽隊やクラシック音楽の中で使われることを想定して作られた楽器です。
特に軍楽隊では、屋外でもよく響く音量や、合奏の中で埋もれにくい存在感が求められます。
サックスは金属製の管体を持ち、しっかりと響く音を出せる一方で、リード楽器ならではのなめらかな表現もできます。
そのため、金管楽器と木管楽器の間をつなぐような役割を期待されていました。
クラシックから、ジャズやポップスへ
その後、サックスは時代とともにさまざまな音楽の中へ広がっていきます。
クラシックや吹奏楽の中で使われるだけでなく、20世紀に入るとジャズの発展とともに、サックスは一気に存在感を増していきました。
人の声に近いような表情豊かな音色や、メロディを歌うように演奏できる特徴が、ジャズの世界ととても相性がよかったのです。
サックスの音は、やさしくも、渋くも、力強くもなります。
ゆったりしたバラードでは歌うように響き、アップテンポな曲では勢いよく前に出ることもできます。
現在では、ジャズだけでなく、ポップス、ロック、吹奏楽、映画音楽など、さまざまな場面でサックスの音を聴くことができます。
街で流れる音楽やテレビ、映画の中でも、実はサックスの音が印象的に使われていることがあります。
サックスには、いくつかの種類がある
サックスとひとことで言っても、実はいくつかの種類があります。
よく知られているのは、アルトサックス、テナーサックス、ソプラノサックス、バリトンサックスなどです。
大人初心者の方が最初に触れることが多いのは、アルトサックスです。
アルトサックスはサイズや音域のバランスがよく、初心者にも扱いやすい楽器として選ばれることが多いです。
テナーサックスはアルトより少し大きく、低めで太い音が魅力です。ジャズらしい渋い音色をイメージする方は、テナーサックスを思い浮かべるかもしれません。
ソプラノサックスは高めの音域を持ち、まっすぐな形のものもあります。バリトンサックスは大きく低い音を担当し、合奏の中でしっかり土台を支える存在です。
アドルフ・サックスが考えたサックスは、ひとつの楽器だけではなく、音域の違う仲間を持つ楽器として広がっていきました。
初心者にも親しみやすい理由
サックスは見た目が本格的なので、最初は少し難しそうに感じるかもしれません。
でも、音を出すところからゆっくり始めれば、大人になってからでも十分に楽しめる楽器です。
もちろん、きれいな音で演奏したり、曲を自由に吹けるようになったりするには練習が必要です。
ただ、最初の一音が出た瞬間の楽しさは、サックスならではの魅力です。
息を入れて、リードが震えて、楽器全体が鳴る。その感覚は、実際に体験してみるととても印象に残ります。
サックスの歴史を知ると、ただ音を出すだけでも少し見え方が変わります。
この楽器は、力強さとやわらかさを両立させたいという発想から生まれ、時代を超えてさまざまな音楽に受け入れられてきました。
そう思うと、最初の一音にも少し特別な意味があるように感じられるかもしれません。
楽器の背景を知ると、少し好きになる
サックスの歴史を知ったからといって、すぐに演奏が上手くなるわけではありません。
でも、どんな人が作ったのか、なぜこんな音がするのか、どんな音楽で親しまれてきたのかを知ると、楽器への距離が少し近くなります。
アドルフ・サックスは、新しい音を求めてサックスを作りました。
その楽器が、時代を超えてクラシック、吹奏楽、ジャズ、ポップスへと広がり、今では大人になってから趣味で始める方にも親しまれています。
少し不思議で、少し華やかで、どこか人の声に近いような音色を持つサックス。
その背景を知ることで、楽器を手にしたときの気持ちも少し変わるかもしれません。
FLATでは、楽譜が読めない方や、楽器が初めての方でも、自分のペースでサックスを始められます。
まずは音を出すところから、少しずつ楽しんでみてください。